Clay Hausmann and Matthew Van Wingerden

新しい10年が始まり、ライフサイエンス業界は大規模な変革の最前線にいます。ガートナー社の最新レポート Predicts 2020: Life Science CIOs Must Digitalize for Business Growth1(ガートナー社の購読が必要)では、「AI(人工知能)は、最もパワフルなテクノロジーのひとつであり、新しいビジネスモデル、顧客体験、サービス提供、複数業界にわたるビジネス・エコシステムを可能にする」と述べられています。本内容は、ライフサイエンス企業がいかにコマーシャル・オペレーションを変革していくかです。

ちょうど5年前、私たちは「MR向け推奨コンセプト」を紹介しました。今日、AIはコマーシャル・プロセスのあらゆるチャネルに拡がってきました。しかしながら、AIおよび機械学習の可能性を最大化するには、まだまだ長い道のりの半ばといえます。2020年、インパクトはどこからもたらされるのか?ライフサイエンス業界で見られつつある6つのトレンドをご紹介します

1. オムニチャネル、今度こそ

「またオムニチャネル?MCM? 年末恒例のトレンド記事?」と思われるかもしれません。はい、確かにまたです。ただし今回は立派な理由があります。いくつかの要素が加わることで今回は、オムニチャネルを成功に導くのです。まず一つの要素としては、オムニチャネルを成功させるためには顧客との個人的な関係に根付くものでなければならないと学んだことです。貴社の組織で最も関係性を把握しているのがMRです。毎回開催されている事前戦略セッションやトレーニング・ワークショップにてMRを必ず巻き込むことで、結果はより効果的になります。現場は、最後に組み込む単なる実行チャネルではなく、終始貢献者であり、そのように位置付ける必要があります

第二に、AIは特にそれぞれを関連づけ、各チャネルのパフォーマンスを分析し、最適化できます。最近開催しました講演会で実施した調査で、ライフサイエンスのエグゼクティブの方々が、「マルチチャネル・カスタマージャーニー」はコマーシャルチームを支援する上で最もAIのインパクトがある分野であると述べられています。今日、チャネル・コミュニケーションと医療従事者の嗜好を合わせ、パフォーマンスをモニターし、これまではできなかった学習も取り入れることが可能になりましたので、オムニチャネルは、単なるバズワードではなく現実のものになりました

2. MRを強力に支援

「AIがMRに取って代わるのでは」という恐れは、近年「AIがMRを強力に支援」に変わってきています。ブルッキンギ研究所のレポート(A recent report from Brookings)によりますと、「技術系営業が実行する37%の業務は、AIベースシステムで自動化が可能」であると。その記事で、MITのエコノミスト、David Autor氏は、「我々のクライアントと過去数年協業するなかでの経験から、テクノロジーは置き換えない、補完するのである」と強調されています

AIは、ある業務を自動化し効率を改善します。しかし、ほとんどの業務はAIと人の判断の絶妙なブレンドが必要となります。増加するトレーニング、随時更新されるインセンティブ・プログラムおよび進化する業務内容により、営業の役割はすでに変化してきています。急激なスピードで、従来型のPOAサイクルから変わりつつあり、継続的に行動を改善、より厳格に実行するという戦略に対して、チームがより顧客との接点を持てるようにします

3. CRMを超えて

CRMは依然多くの営業支援ツールの基礎ですが、現場のユーザにとって使い勝手が良くあることがますます望まれています。ライフサイエンス企業は、現行のユーザ行動にマッチするコミュニケーション・ツールをとてもうまく把握し、活用されています。例えば、中国のWeChat、米国のテキストおよびチャット機能、世界的には音声機能も活用し始めています。それぞれコミュニケーション・ツール、展開ロードマップ、もしくはライフサイエンス企業のコマーシャルチームにとって、より卓越したものになっています。より迅速に対応する要望は、ビジネス・パフォーマンスや顧客満足度全体に対して直接的なインパクトを持っています

4. 追加されるオペレーション資源

ちょうど18カ月前、ほとんどのライフサイエンス企業は、本業とは別のプロジェクトとしてIT、営業、ブランド、分析担当の協業で関係性構築業務に対処していました。時に、専任の革新チームを置くこともありますが、地域やブランド中心の意思決定プロセスからほとんどの場合切り離されたままでした。本業界のトレンドは変わりつつあり、医療従事者は、調整済みで個別化されたソリューションを期待しています

今日、ライフサイエンス企業は、コマーシャル・オペレーションにもたらすAIインパクトこそが存在価値であるという認識のもと、企業はこれらの活動をずっと効果的にしようと資源を投下してきています。例えば、専任チームは、グローバルの代表者たちとともに、すでに実績をあげてきているマーケティング活動と連携をとり、より力強さと全面展開のスピードを上げています。ある顧客では、昨年だけで関係性構築チームの人員を5名から60名に増やし、計画では2020年には100名以上に増員しようとしています

5. 初めからグローバル視点

コマーシャルAIでの「時間の問題」と言われている流れの第二の副産物は、企業がまさにグローバルを考え始めたという傾向がますます見て取れます。ガートナー社が最近、 Hype Cycle for Life Science Commercial Operations 20192 (ガートナー社の購読が必要)のなかで「ライフサイエンス・コマーシャル・アナリティカル市場」が生産性の安定期にはいったと位置付けました。レポートによりますと、ライフサイエンス・コマーシャル・アナリティカル市場での導入率は、ターゲットに対して、20%から50%に達しています。まだライフサイエンス・コマーシャル・アナリティカルを導入していない顧客にとって、コマーシャル関係性構築においてAIを導入するのは今であると確信しています。「地域や専門性を超えシムレースな協業を図り、医療従事者のデスクや国境を超えて優れた顧客体験を提供できるテクノロジーを上手に活用する」(Syneos Health引用) など、企業はもはや単独ではなく、コマーシャル活動に関する新しい手法を評価しています

Aktanaでは、2年前に比べ、最初からマルチブランド、マルチリージョン・プログラムに取り組まれているお客様が増えてきています。成功指標では依然急速な拡大促進が求められますが、顧客のマインドセットは今や先ずは成功させる。そして次の拡大に備えようとなっています

6. 進歩した予測可能性

2020年企業がAIを導入するに従い、進歩した予測可能性はいたるところで見受けられることでしょう。例えば、臨床医の処方や製品採用履歴を記述するデータフレームワークの構築は標準となるでしょう。先進的な症例別データモデルは、患者やその家族の節約につながる生産性を予測し改善するよう支援して、市場とともに発展、進化していきます。進歩した予測があれば、マーケティングはキャンペーン情報を迅速に収集でき、顧客ジャーニーの改善に向け調整が可能となります。AIテクノロジーにより、売上高、市場シェア、購入タイミングをAIベースでモニタリングし、処方行動による売上変化検出を継続的に改善できます

例えば、我々のある顧客は、循環器患者群で増加が見られたターゲット外医療従事者に関して、米国市場での新規売上機会を特定しようとされました。我々の売上変化検出モジュールで、季節要因やトレンドを調整でき、指標内でのいつもと違う変化を検出でき、購入と処方頻度のギャップを特定することができました

5年間の成長および評価期間を経て、コマーシャル・プロセスのAIは、2020年根付いていくことでしょう。グローバル資源の効果的な業務ターゲットから変更管理まで、組織的な投資はまさに進行中です。いかにAIが導入され、評価測定され、最適化されるかにより、近未来がどうなるか(ビデオ near future looks like)、どれだけ早くベネフィットを享受できるかが決まります

1Gartner “Predicts 2020: Life Science CIOs Must Digitalize for Business Growth,” Animesh Gandhi, et al, 23 December 2019 

2Gartner “Hype Cycle for Life Science Commercial Operations, 2019,” Michael Shanler, Animesh Gandhi, 3 August 2019